福井市自然史博物館 マスコット(シジュウオ) このページの最終更新日:2024年7月14日

福井県の「県の石」

 平成28年、日本地質学会によって、47の各都道府県を代表する「県の石」が制定されました。都道府県ごとに、化石・岩石・鉱物の3種類が選ばれています。福井県からは、以下の3つが選ばれました。

 【化石】フクイラプトル・キタダニエンシス
 【岩石】笏谷石
 【鉱物】自形自然砒(金平糖石)

 当館では、このうち笏谷石と自形自然砒を所蔵・展示しています。

笏谷石

▲笏谷石
 古くから石材として利用されてきた福井の名石です。約1800万年前の大規模な火山活動により生じた火山灰や岩石片(軽石や火山礫)からなる「デイサイト軽石火山礫凝灰岩」で、博物館のある足羽山で採掘されていました。特徴的な青緑色は、軽石が変質した緑泥石などの鉱物によるものです。
 足羽山に多くの古墳が築かれた4〜5世紀頃にはすでに利用されており、古くは地表の岩盤を露天掘りで、江戸時代以降は坑道を掘って、平成11年まで採掘が行われました。きめ細かく鮮やかな色合いと、比較的軟らかく加工しやすい性質から広く利用され、福井城の石垣や神社の階段といった構造物、石仏や墓石、暖房具のような日用品など様々なものが作られています。また、江戸時代には北前船によって全国各地に運ばれ、松前藩主の墓所(北海道)などにも使用されています。
 現在、笏谷石の採掘は行われていませんが、朝日山不動寺の崖などで露天掘りの跡を見ることができます。また、七ツ尾口坑などの坑道跡も洞窟として残っており、酒蔵などとして利用されているほか、足羽山の固有種を含む洞窟性生物の棲み処にもなっています。

▲朝日山不動寺の露天掘り跡

自形自然砒(金平糖石)

▲自形自然砒
 明治時代に下味見村(現・福井市)の赤谷鉱山で採掘されていた、特徴的な形の砒素(自然砒)です。針状の結晶(菱面体結晶)が放射状に集合して球形となっており、多数の突起がそれぞれ結晶の角にあたります。大きいもので直径2pほどになり、新鮮な面は黒っぽく金属光沢があります。まるで金平糖のようなその形から「金平糖石」とも呼ばれました。
 自形とは、他の鉱物などに邪魔されることなく成長した鉱物本来の結晶の形のこと。自然砒は一般的に結晶とならず塊状で産出するため、このような形状で産出するのは世界的にも珍しく、海外の専門書などでも赤谷鉱山のものが紹介されています。
 赤谷鉱山はすでに閉山し、鉱石の採掘は行われていませんが、今も赤谷川周辺では自然砒を採集することができます。

※砒素は非常に強い毒性を持ちます。特に表面の白くなっている部分は水に溶けやすい亜砒酸に変化しており、口に入れると非常に危険です。かつては防虫剤や殺鼠剤に利用されていましたが、現在は危険性が高いことから使われていません。

▲現在の赤谷鉱山跡周辺


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