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このページの最終更新日:2003年9月2日

福井市自然史博物館 特別展 今年の夏は火星に大接近

火星の大接近とは?

 火星は地球の外側をまわっているお隣の惑星です。地球は約365日で太陽のまわりを周りますが、火星はゆっくりとその1.88倍(約687日)ほどかけて一周します。そのため軌道上で地球は約780日ごとに火星に追いついて並ぶことになります。ですから地球から見ると2年2ヶ月毎に火星は接近してくるのです。

 接近には更に微妙な問題があります。それは地球の公転軌道は円に近いのですが、火星のそれはかなりの楕円で、お互いの軌道が近いところとかなり離れるところがあるのです。両者の軌道の距離がせまいところで並ぶような接近をとくに「大接近」とよんでいます。大接近は15年ないし17年ごとに起こります。

火星と地球の接近図
火星と地球の接近図:火星の軌道はかなりの楕円であるため、接近の位置によって互いの距離が異なります。1956年、1971年、1988年、2003年は近日点の近くでの接近で「大接近」に属します。2003年の大接近はとくに近日点の近くになります。
「天文年鑑」(南・西田図)より



1971年の観望会の様子

1971年大接近時の火星観望会の様子。約400人の市民がレンズをのぞきました。
 福井市自然史博物館では1952年から火星を観測していますが、1956年9月7日には大接近が起こり、多数の市民が天文台を訪れました。その15年後の大接近は1971年8月12日、その次は17年後の1988年9月22日に起こっています。そして、今度は今年2003年8月27日にその大接近が起こるのです。


火星大接近は、なにがどうスゴイのか

 「大接近ってそんなに騒いでるけど、火星が地球にぶつかるわけじゃなし、なにがどうスゴイのさ?」と思われるかもしれませんが、博物館がこの天文ショーをお祭り騒ぎのようにあおる(?)理由は3つあります。解説しましょう。

1.とっても大きくみえる
 古来より火星大接近が人びとに注目されてきたもっとも大きな理由は、なんといっても火星そのものが大きくみえることにあります。地球と火星が太陽をはさんでもっとも離れるとき(「合(ごう)」といいます)、その距離はおよそ4億キロもあります。しかし、太陽・地球・火星が並ぶ「衝(しょう)」が近日点付近でおこる大接近のとき、その距離は5500万キロにまで縮まります。この時、見た目の大きさは合のとき(つまり、遠いとき)に比べて直径で7倍、面積比で50倍にもなります。大きく見えるということは、火星の細かい部分まで観測できる、ということを意味します。普及型の天体望遠鏡でも、その極冠や大きな地形なら十分に見える大きさになります。

地球から見た時の大きさくらべ
1988年9月の衝
(大接近)
視直径23.6秒
1995年2月の衝
(接近)
視直径13.8秒
2000年6月の合
(最も遠い)
視直径3.6秒
2001年8月の衝
(接近)
視直径20.5秒
2003年8月の衝
(大接近)
視直径25.1秒

 実際には、大接近と言えどもお月さんのような大きさで見えるわけではありません。この画面を220メートル離れて見れば、見かけの大きさに等しくなります(普通のおうちでは難しいですが...)。
<画像:NASA/JPL・火星表面の模様は実際の見え方と異なります>

 大きく見えるというのは、天文学者にとって絶好のチャンスです。火星にまつわる大発見はいつも大接近の時でした。例えば1877年8月には、アメリカのホールが火星の衛星発見に執念を燃やし、当時の世界最高性能だった海軍天文台の66センチ屈折望遠鏡を使って、小さな2つの衛星(フォボスとダイモス)を見つけています。また1956年には大黄雲が発生し、日本の東亜天文学会が世界で初めてくわしい発生過程を記録しました。

2.めったにない
 大接近が15年ないし17年毎と言っても、なかなか同じような接近はありません。「大接近」でも少しずつ違いがあるのです。20世紀に起こった最大の「大接近」は1924年に見られたものでした。しかし2003年の接近はこれを超えます。実は過去二千年の大接近でも最大のもので、さらにあと数百年これを超える接近はありません。しかも最近のスーパーコンピュータの計算では、大接近には10万年を単位とする大きな「うねり」があって、3万5千年前頃には2万年に及ぶ大接近“氷河時代”があり、今はむしろ回復期にあって、2003年の大接近は過去5万7千年の中では最大のものと判明しています。有史以来の大接近ということになるのです。つまり、あなたがこのチャンスを見逃してしまうと、年に1度の紅白歌合戦で小林幸子の衣装を見逃したり、4年に1度のオリンピックで陸上男子100m走決勝を見逃すのとはレベルのちがう後悔をもたらすのです!! 今年の大接近は阪神タイガースの優勝なみ、いや、それよりもスゴイことなのです!!!

3.気合いがちがう
 これだけなら、普通の天文ショーとはなんら変わらないと思われるかもしれません。しかし、こと火星となると、福井市自然史博物館の気合いはちがいます。それはなぜなら、当館が50年前に開館して天文台を備えて以来、ずっと火星の観測を続けてきたからなのです。すでに1956年、1971年、1988年と3回もの大接近を経験しており、大接近に関しては国内の天文台でも有数のベテラン選手なのだと(手前みそですが)宣言しちゃいましょう。今回の展示では、その観測記録を一堂に公開します。そしてもちろん、大接近となる8月下旬には当館天文台の20センチ屈折望遠鏡で火星をみる天体観望会も実施します。火星の展示と実物を一度にみられるのは、日本では福井市自然史博物館だけの企画です(たぶん)。ね、気合いがちがうでしょ。


おしらせ
このページの地球と火星の距離の説明について、つぎのような正確でない表現がありました(下線部)。
■火星大接近は、なにがどうスゴイのか
1.とっても大きくみえる
古来より火星大接近が人びとに注目されてきたもっとも大きな理由は、なんといっても火星そのものが大きくみえることにあります。地球と火星が太陽をはさんでもっとも離れるとき(「合(ごう)」といいます)、その距離は
1億キロ以上もあります。しかし、太陽・地球・火星が並ぶ大接近のとき(「衝(しょう)」といいます)には、その距離は5500万キロにまで縮まります。・・・
合の時の距離が1億キロ以上というのはまちがいではありませんが、実際にはおよそ4億キロになります。1億キロという数字は、遠日点付近での接近時(いわゆる「小接近」)の距離になります。そのため、このページで該当(がいとう)する部分を訂正(ていせい)いたしました。もし調べものなどでこのページを参考にされた方は、たいへん申しわけありませんが、あたらしい今のページを参考にしていただくようお願いいたします。

なお、ご指摘をいただいた方にはこの場をかりてお礼を申しあげます。また、このページを以前にご覧になった方や、このコンテンツをご紹介いただいているYahoo!きっずの関係者の方にはご迷惑をおかけしました。おわび申し上げます。(2003年8月27日 担当:石田惣)



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