オスジカどうしの角突きイラスト オスはオスとたたかう (5)

性転換という生き方

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オスからメス、メスからオスへ

オスどうしがたたかうとすれば、おそらく体の大きい方が強いでしょう。大きいオスはあらそいに勝つことで、メスにたくさんプロポーズできるはずです。
だとすれば、小さいころはメスとして生きて、大きくなってからオスになったとしたら、子供をのこすのにとてもつごうがよさそうです。こんな虫のいい話、はたしてありえるのでしょうか?

じつはあるのです。いくつかの生き物で、自分の性をとちゅうで変えることが知られています。たとえばホンソメワケベラという魚は、群れの中でいちばん体の大きい1匹だけがオスになります。何かのきっかけで群れからオスがいなくなると、次に体の大きいメスがオスに変わります。

逆に、体が大きくなるとオスからメスに変わる生き物もいます。クマノミのなかまは2匹でペアになって子供をのこしますが、体の大きい方がメスになります。これはなぜでしょうか? クマノミでは、オスどうしがあらそうことは少ないようです。おそらくクマノミは、メスとして丈夫でたくさんの卵をうむために、小さいあいだはオス、大きくなってからメスになるのだろうと考えられています。同じような生きかたは、マムシグサ(テンナンショウ)という植物でもみられます。

ホンソメワケベラの場合・説明図

クマノミの場合・説明図

いくら子供をのこすのにつごうがいいとはいえ、実際に性転換(せいてんかん)をする動物はかぎられます。たとえば、ほにゅう類や鳥では生殖器官(せいしょくきかん)が複雑で、それらを簡単に作りかえることはできないため、性転換する種は知られていません。魚類で性転換が多いのは、生殖器官の構造が単純(精巣(せいそう)や卵巣(らんそう)だけ)ということがあげられます。

コウライテンナンショウ
「コウライテンナンショウの雄花(左)と雌花(右)」
(福井市足谷町)ZOOM
撮影:赤井賢成
マムシグサの仲間は、小さい間(小葉数の少ない間)は雄花、成長すると雌花をつけるようになります。写真では茎の太さの違い、雌花の仏炎苞(ぶつえんほう)に見える花序に注目してください。

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特別展「どうぶつたちのプロポーズ大作戦!!」電子図録
(C)2004 福井市自然史博物館