オスジカどうしの角突きイラスト オスはオスとたたかう (3)

ごじまんのキバとツノ

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たたかう武器

いろいろな種のオスで、たたかう武器となるキバやツノが進化しました。イッカクのキバ、ニホンジカのツノ、クワガタムシのアゴなどは、すべてオスだけにみられるものです。

大きなキバやツノをみると、血みどろのあらそいを思わせます。しかし、たたかいの場において相手のオスを傷つけることはほとんどありません。たいていはツノの大きさを見せあったり、キバの長さを比べあったりして勝ち負けが決まります。シカではツノを突き合わせることがあっても、ケガになるような突き方はしないようです。このようにオスどうしのたたかいは、決まった手順にしたがってすすむ「儀式(ぎしき)」として行われることが多いようです。
ニホンジカの頭骨
「ニホンジカの頭骨」ZOOM
左・オス(馬毛島産・所蔵:立澤史郎
右・メス(奈良県産・館蔵標本)

イッカク(オス) イッカク(メス) 「イッカクのオス(上)とメス(下)」ZOOM
撮影:村田明久(千葉県立中央博物館分館・海の博物館)

イッカク頭部(オス) イッカク頭部(メス) 「オス(左)とメス(右)の頭部」ZOOM

イッカク

イッカク(Monodon monoceros)は北極海にすむハクジラのなかまです。オスには長い「キバ」があります。キバはもともと、上あごにうもれていた2本の歯のうちの1本が皮ふをつきやぶって伸びてきたもので、メスでは大人になっても伸びてくることはありません。

このキバの役目について、むかしは「氷を割るため」や「海底でエサをとるため」に使われると考えられていました。しかし、これらはメスにキバがないことの説明にはなりません。野生のイッカクの研究がすすむにつれて、どうやらオスどうしのたたかいに使われているらしい、ということが最近わかってきました。

写真のイッカクは1992年にカナダ北東のバフィン湾(北緯73度、西経75度)で捕獲されたもので、千葉県立中央博物館分館・海の博物館所蔵の全身骨格標本です。


チリーコガシラクワガタ ヘラクレスオオカブト
オウゴンオニクワガタ ゾウカブト
ZOOM

クワガタ・カブトムシ

オスがケンカするための器官が進化した例として、真っ先に思いつくのは昆虫のクワガタやカブトムシの仲間です。クワガタの「アゴ」は大顎(だいがく)と呼ばれる付属肢(ふぞくし・関節をともなう手足のような器官)が発達したもので、カブトムシは頭部と胸部の一部が伸びて「ツノ」を形作っています。いずれもオスどうしがアゴやツノを使い、なわばりなどをめぐってあらそう様子が観察されます。

左の写真:
上左:「チリーコガシラクワガタ」・上右:「ヘラクレスオオカブト」
下左・「オウゴンオニクワガタ」・下右「ゾウカブト」
(所蔵:下野谷豊一

ウミクワガタ(オス) ウミクワガタ(メス) 「ウミクワガタのオス(左)とメス(右)」ZOOM
撮影:田中克彦

ウミクワガタ

ウミクワガタは海にすむ等脚目(とうきゃくもく・ダンゴムシの仲間)の甲殻類(こうかくるい)で、昆虫ではありません。オスにはクワガタムシそっくりの大顎(おおあご)があります。

ウミクワガタの生活は明らかにされておらず、大顎の機能もほとんどわかっていません。ウミクワガタのいくつかの種はハーレム(1個体のオスが複数のメスをしたがえて群れを作る)ことが知られています。そのため、オスどうしの闘いに使われている可能性もあります。

左の写真は宮城県志津川町の海岸でフタエラフサゴカイ(Nicolea gracilibranchis)の棲管(せいかん)から採集されたウミクワガタ(ソメワケウミクワガタかその近似種 Elaphognathia sp.)です。

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特別展「どうぶつたちのプロポーズ大作戦!!」電子図録
(C)2004 福井市自然史博物館