福井県南条山地における放散虫化石産地ノート
―その2― 池ノ上地区;下別所・中津原地区;瓜生野地区
Note of occurrence of radiolarian fossils in the Nanjo Massif,
Fukui Prefecture, Central Japan
−No.2− Ikenokami Area;Shimobessyo・Nakatsubara Area; Uryuno Area
V 武生市池ノ上(図1、図版1)
本地区は、南条山地の最北端に位置する。試料より得られた放散虫化石は美濃帯に普通に見られるもので、ジュラ紀を示す。しかし、試料採取地点の約1km東方に位置する妙法寺付近の露頭からは、梅田(1996)により、後期二畳紀を示す放散虫が報告されており、それらは超丹波帯に特徴的な群集である。
図1:武生市池ノ上地区における試料採取地点/国土地理院発行2万5千分の1地形図「武生」を使用.スケールは1km,Pは,二畳紀後期の放散虫産出地点(梅田,1996).
図版1
池ノ上地区より得られた放散虫化石の電子顕微鏡写真(スケールは0.1?)
化石名/産地/地点番号(F)/試料番号の順で記す.
A:Trillus sp./池ノ上/F528/TG96052333
B:Trillus sp./池ノ上/F528/TG96052333
C:Parahsuum ovale(?) Hori and Yao/池ノ上/F528/TG96052334
D:Parahsuum sp. /池ノ上/F528/TG96052334
E:Parvicingula(?) sp. /池ノ上/F528/TG96052334
W 武生市下別所・中津原地区(図2,図版2)
本地区は、南条山地の北端部に位置する。きたない黒色頁岩を主体とし、その中にチャート・緑色岩・砂岩・石灰岩の大小様々のレンズ状岩塊が散在する。いわゆる春日野相(服部・吉村,1982;福井県,1985)が分布する。レンズ状チャートからは二畳紀や三畳紀、そして基質の頁岩からは最前期ジュラ紀の放散虫化石が得られている。南条山地北端部の池ノ上や下別所・中津原地区で得られた化石データは,美濃帯と超丹波帯との境界を定める上で重要な意味をもつ。
放散虫化石は、保存状態が不良で、種名まで同定可能なものはない。
図2:武生市下別所・中津原地区における試料採取地点/国土地理院発行2万5千分の1地形図「糠」を使用
図版2
下別所・中津原地区より得られた放散虫化石の電子顕微鏡写真(スケールは0.1?)
化石名/産地/地点番号(F)/試料番号の順で記す.
A:Pseudoalbailella sp./下別所/F0030/IH81041218
B:Pseudoalbailella sp./下別所/F0010/NP81
C:Paronaella? sp./下別所/F0030/IH81041218
D:Canoptum sp./中津原トンネル/F0033/IH81041216
E:Canoptum sp. /中津原トンネル/F0033/IH81041216
F:Canoptum sp. /中津原トンネル/F0033/IH81041216
G:Canoptum sp./中津原/F0107/IH81092006
H:Parahsuum sp./中津原/F0264/IH82090201
I :Parahsuum sp. /中津原/F0107/IH81092006
J:Bagotum(?) sp. /中津原/F0107/IH81092006
K:Natoba(?) sp./中津原/F0108/IH81092008
X 武生市瓜生野地区(図3,図版3)
本地区には、これまでの野外調査(服部・吉村,1982;吉村ほか,1982;福井県,1986など)によれば、今庄相が分布する。今庄相とは、主として砂岩、頁岩およびそれらの互層を主体とし、側方に連続性のよい三畳紀のチャートや大小様々のサイズのレンズ状チャートが無数に含まれる層相である。基質をなす頁岩からは前期ジュラ紀の放散虫化石を産する。
図2:武生市瓜生野地区における試料採取地点/国土地理院発行2万5千分の1地形図「今庄」を使用
図版 3
瓜生野地区より得られた放散虫化石の電子顕微鏡写真(スケールは0.1?)
化石名/産地/地点番号(F)/試料番号の順で記す.
A:Pantanellium sp./瓜生野東/F0099/MY81080407
B:Trillus sp./森久東/F0052/IH81051418
C:Canoptum(?) sp./森久東/F0052/IH81051418
D:Canoptum sp. /瓜生野/F0100/MY81080401
E:Canoptum sp./瓜生野/F0052/IH81051413
F:Parahsuum simplum(?) Yao /森久東/F0052/IH81051418
G:Parahsuum sp. /瓜生野/F0100/MY81080401
H:Eucyrtidiellum sp. /森久東/F0052/IH81051418
I :Bagotum( ?) sp. /瓜生野/F0100/MY81080401
J :Stichocapsa sp. /森久東/F0052/IH81051418
**引用文献は割愛