昨年の夏、博物館の中でハネナシコロギスを採集したので記録しておきます。
1998年8月20日の朝、出勤して事務室に入ったとたん部屋の隅にいる虫に気づきました。職業がら虫を見つけることにかけては素早いのです。近づいてよく見ると、何とハネナシコロギスでした。足羽山ではこれまであまりお目にかかったことのない虫です。
ハネナシコロギスは体長15?ほどの肉食性の昆虫です。かっ色の体でせなかは黒く、アンテナ(触角)は体長の5〜6倍もの長さがあります。名前のとおり羽はなく、樹上性で葉をまいて昼間は中に潜んでいます。夜になると葉の上を歩き回って餌をとらえます。
このハネナシコロギスは玄関のガラス戸のすきまをすりぬけて事務室に入りこんだのでしょう。飛ぶことはできないので、近くの樹木から歩いてやってきたと思われます。いったい、事務室の中の何がお目当てだったのでしょうか?
余談になりますが、フクイアナバチという大型のアナバチは、ハネナシコロギスだけを狩り、幼虫の餌にします。
長田 勝(おさだ まさる:博物館学芸員)