地学散歩D 噴礫脈(ふんれきみゃく) 

 活断層のトレンチ調査を知っていますか。活断層とは「最近の地質時代にくり返し活動し、将来もまた活動すると考えられる断層」と定義されています。活断層がどこにあるかは、地形の不連続で推定したり、工事などで壁面に断層が現れたり、大地震でズレが地表にまで達することにより判明します。後者の例としては、兵庫県南部地震(1995)で現れた「野島断層」や濃尾地震(1891)で現れた「水鳥断層」が有名です。しかし、本当に活断層か、いつ活動したのかなどは、実際に掘ってみないと分からないものが多いのです。


 昨年(1998年)、「福井県地域活断層調査検討委員会」により、丸岡町篠岡(しのおか)で活断層のトレンチ調査が行われました。現場には幅2m、長さ6m、深さ3mのトレンチ(細長い溝)が掘られました。この場所がトレンチ地点に選ばれたのは、地形的不連続があることと音波探査・ボーリング調査で、ここに活断層がありそうだと推測されたからです。現場には、断層調査検討会の関係者をはじめ、福井地震を体験し、その正体を見てやろうという付近のお年寄りなど、地学に興味のある人が大勢見学に来ていました。

土器片をさがす

図1:土器片をさがす調査検討会の人たち

 さて、ここからが本題の「噴礫脈」についてお話しです。図1に示したのがトレンチ調査で現れた噴礫脈の断面です。脈幅は広いところで100?もあり、脈を構成する礫は2〜15?です。これは日本でもりっぱな(?)噴礫脈のひとつです。


 ところで「噴砂現象」という言葉を最近よく耳にするでしょう。これは、大きな地震動により地下にある未固結の砂層が揺すられ、粒子間の水圧が上昇し、砂粒がバラバラになり(液状化現象)、砂が水の動きにあわせて上位の地層を引き裂いて地表まで噴き出てきたものです。噴礫とは、噴砂と同じ原理で、地震による液状化現象により地下の礫層の礫が地表まで吹き上がってきたものです。篠岡のトレンチ調査で現れた噴礫脈中の礫の大きさから推定すると、非常に大きな揺れが近くであったと思われます。

トレンチで現れた噴礫脈

図2:トレンチで現れた噴礫脈の様子

 下から吹き上がってきた礫が、横に広がっている面が地震当時の地表面に当たります。福井県地域活断層調査検討委員会によれば、脈の直上からは13〜15世紀の越前焼きの破片が、そして直下からは13世紀のカワラケ(上薬がかかっていない陶器)片が見つかりました。したがって、13世紀から15世紀にかけて大地震が発生した(=噴礫の時代)ことが分かりました。

参考文献:福井県,「平成10年度 地震関係基礎調査交付金 福井平野東縁断層帯に関する調査 概要報告書」(印刷中)

梅田美由紀(うめだみゆき:博物館学芸員)


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