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セスジスズメ

 セスジスズメはスズメガ科に属するガです。スズメガの仲間は太い胴体に細長い三角形の羽をもち、その姿はジェット機のようです。スズメガの幼虫はいわゆる“イモムシ”で、腹端にトゲ状の突起があります。十分に成長した幼虫は地表もしくは地中で蛹(さなぎ)になります。


 セスジスズメの成虫は腹部のせなか側に白い線があり、これがセスジの名の由来です。年2回発生し、6月〜10月にかけて市街地などでも普通に見られ、住宅の外灯にしばしば飛来します。
 幼虫はヤブガラシ、ノブドウ、ホウセンカなどの葉を食べ、体長8?ほどになります。幼虫の体は通常黒色のビロード状で、第1〜第7腹節に目玉もよう(眼状紋)があります。


セスジスズメのさなぎ

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(さなぎの図は、原色日本蛾類幼虫図鑑(上)、保育社、1965より引用しました)

 チョウやガはその羽に目玉もようをもつものがあり、また幼虫にも目玉もようのあるものがみられます。この目玉もようは捕食者である鳥に対して進化したものだと考えられています。鳥を使った捕食実験では、小さな目玉もようは捕食者の攻撃をそこに集中させる効果があり(代表的なのはジャノメチョウなどの羽にある小さな目玉もようで、羽のへりにある目玉もようを攻撃させることで体そのものへのダメージを免れているようです。実際、野外では目玉もようの部分にくちばしの跡が残っているチョウが観察されています)、大きな目玉もようは捕食者をおどろかす効果があることがわかっています。


 チョウやガの羽は少し破れたくらいでは生存上のダメージはありませんが、幼虫では体を突かれると大きなダメージとなります。それをのがれるために、捕食者のきらう姿をまねることもひとつの手段です。セスジスズメの幼虫の目玉もようは、幼虫の体つきとあいまってヘビの頭に似せているように思えるのですが……。

長田 勝(おさだ まさる:博物館学芸員) 


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