イチオシ!博物館のお宝標本


 ニホンオオカミの頭骨
 ニホンオオカミは、かつて日本国内に広く生息してましたが、伝染病や駆除によって数を減らし、20世紀初頭に絶滅しました。確実な記録としては明治38年(1905年)が最後ですが、明治43年(1910年)に福井城址で捕殺された個体がニホンオオカミであったとする説もあります。
 本標本は、鯖江市の民家で保管されていたニホンオオカミの頭骨です。口頭伝承および放射性炭素年代測定から、室町〜江戸時代のものと推定されました。かつては狐憑きなどの憑き物落としに用いられたとされ、表面が黒いのは囲炉裏の煤が原因と考えられます。




 福井県最後のトキ
 昭和32年(1957年)に福井市の日野川で採集された雄の剥製標本です。県内唯一のトキの標本であり、同時期に同じ場所で見られた群れが県内最後のトキの記録となっています。
 福井県でのトキの記録は、佐渡島(新潟県)、能登半島(石川県)に次ぐ、最後から三番目に日本産の野生トキが確認された記録でもあります。




 福井に飛来したコウノトリ
 昭和30年(1955年)、おそらく大陸から福井市西部の水田地帯に飛来したと推測される個体です。誤って罠にかかったところを当館で保護されました。
 日本のコウノトリは昭和46年(1971年)の記録を最後に確認されておらず、この頃に野生絶滅したと考えられています。日本で最後に繁殖が確認されたのが福井県小浜市であるなど、当時は県民からの愛着も強く、昭和39年〜42年にはコウノトリが福井県の県鳥とされていました。




 双頭のニホントカゲ
 一つの体に二つの頭がある奇形のニホントカゲです。足羽山で令和3年(2021年)に発見され、約2週間生存していました。野生のニホントカゲの双頭個体は、世界初と言われています。CT撮影による観察の結果、鋤骨や強膜輪が癒合していることがわかりました。
 生きていた時の動画はこちら

 当館では、他に令和2年(2020年)に寄贈された双頭のヒバカリの標本も展示しています。




 雌雄モザイクのミヤマクワガタ
 昭和54年(1979年)に福井市(旧美山町)で採集された個体で、体の左半分は雄、右半分は雌の体になっています。
 このように、一つの体に明確な境界線を持って雌雄の特徴が混在するものは雌雄モザイク(ギナンドロモルフ)とよばれ、昆虫などの節足動物で稀に見られます。




 王冠型の角を持ったカブトムシ
 令和3年(2021年)に福井市内で発見された、王冠のような形の角を持つカブトムシです。奇形の一種で、非常に珍しい個体です。



 昭和天皇行幸時の天覧標本
 昭和8年(1933年)に福井で行われた陸軍特別大演習に際し、昭和天皇の福井県行幸がありました。この時、県下小中学校の児童生徒職員を動員して標本が集められ、作製された約8万点の植物標本の中から1768点が天覧標本として選ばれました。標本の台紙には「天覧賜」の印が大きく押されています。
 天覧標本のほとんどは空襲と福井地震によって失われてしまいましたが、当館の初代館長・堀芳孝氏が自宅で保管していた12点だけは無事で、現在まで博物館で保管されています。




 「看板化石」のアンモナイト
 福井県大野市(旧和泉村)で見つかったアンモナイトの一種シュードニューケニセラス・ヨコヤマイの化石です。ジュラ紀中期(約1億6600万年前)に生息していた大型で巻きの緩い種類で、日本では大野市でしか見つかっていない一方、福井から遠く離れたチベットでも同種の化石が見つかっています。
 本標本は昭和27年(1952年)の開館以来長らく当館の「看板化石」として展示されており、当時の案内パンフレットにも写真が使われています。




 ニホンバテイラの模式標本(ホロタイプ)
 模式標本とは、生物(化石を含む)が新種として報告された際に、命名の基準となった標本です。真の基準となる唯一の模式標本をホロタイプ、同じ論文でホロタイプと一緒に記載された標本はパラタイプとよばれます。
 ニホンバテイラは高浜町小黒飯で化石が発見された中新世(約1600万年前)の巻貝で、昭和33年(1958年)に新種として報告されました。ニホンバテイラを含め、当館には巻貝4種・甲殻類1種の化石のホロタイプが収蔵されています。




 自形自然砒(金平糖石)
 明治時代に赤谷鉱山(福井市赤谷町)で採掘されていた、金平糖のような形をした砒素(自然砒)です。一般的な自然砒が結晶とならず塊状で産出するのに対し、赤谷鉱山の自然砒は針状の結晶(菱面体結晶)が放射状に集合して球形となっています。まるで金平糖のようなその姿から、「金平糖石」ともよばれました。
自然砒がこのような形状で産出するのは世界的にも珍しく、平成28年(2016年)にはフクイラプトルや笏谷石とともに福井県の「県の石」に選ばれています。


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