最近の活動報告



4/9 福井の生き物から熱烈歓迎?
 高知から大阪南港までフェリーにのり、南港から福井までは愛車のリトルカブで移動。京都から近江今津あたりまで海津大崎の桜見物の車の渋滞に巻き込まれてチンタラ進む。お昼過ぎに敦賀市の海岸でお握りを食べていたら後方からバサッという音が聞こえ、次の瞬間、手にもっていたお握り(130円もしたますの寿司)をトンビに持っていかれてしまった。武生市ではバイクで走行中にヘルメットにギフチョウがぶつかるし、すごい楽しい所にきたものだと実感。結局7時間かけて無事福井市に到着。


4/12 九頭竜川を探索

 博物館の休館日なので今日は休日。最愛のミゾコウジュ(シソ科アキギリ属)をさがしに九頭竜川を歩いてみた。最近、富山県新湊市で見つかった※1ようだが、なぜか日本海側には少ない。結局4時間ほど歩き回ったけど見当たらなかった。それにしても雪解け水のせいか、晴れているのに水量が多いこと多いこと!扇状地河川なのに低水敷と水面の比高が大きく、低水敷に厚いシルトや粘土が堆積しているのは、四国の河川を見慣れている者にとって新鮮で感動的だった。おそらくミゾコウジュが日本海側に少ないのは、気温や積雪の影響と言うよりも、春先の増水でちょうど彼らが生える水際のハビタットが水没してしまうことが原因かもしれない。
 ※1 大原・中田・高木(2003) 富山県のフロラ資料(7) 富山県中央植物園研究費報告 Bull.Bot.Gard.Toyama 8:55-69.

4/19 文殊山で植物採集
 ひどい雨の中、愛車のリトルカブを福井市南部の角原まで走らせる。今日の採集場所は福井市と鯖江市の境界にある文殊山。標高は366m。ここを舞台に福井市立足羽中学校の自然観察会をヘルプすることになったのでその下見をかねた採集である。福井に来てからフィールドでちゃんと植物採集するのは今日が始めてなのでやや緊張する。林道沿いはトキワイカリソウとオオタチツボスミレが花盛り。エンレイソウの花もちらほら。谷沿いはホクリクネコノメが一面に生えていて踏まないと歩かれないほど。渓流沿いでハイホラゴケやイワヘゴを見つけた時は、思わず高知の山を思い出してしまった。尾根まで上がるとまだカタクリの花が残っていて感激。山頂付近ではミズナラやカエデ類などわずかに冷温帯の植物を確認した。400mには満たないが先っぽだけ暖温帯を抜きん出た感じの山である。
 今日の採集目録 セントウソウ、イワヘゴ、ハルユキノシタ(蕾)、チャセンシダ、ホクリクネコノメ、ノキシノブ、Chrysosplenium sp.、オシャクジデンダ、ヤマルリソウ、ニシノホンモンジスゲ、オクノカンスゲ、ヒメアオキ、シャガ、Cardamine sp.、ヤマネコノメソウ、ハイホラゴケ、ヤブツバキ、カタクリ、コメガヤ、スミレサイシン、ユキグニミツバツツジ、Lindera sp.、クラマゴケ、エンレイソウ、トキワイカリソウ、オオタチツボスミレ


4/24 海浜植物ツアー その1

 お昼から貝類の標本整理担当の福岡さんと一緒に三国町の海岸に出かけた。最初に車を止めたのは東尋坊の東に位置する浜地海水浴場。ここから石川県まで延々と砂浜海岸が続く。砂浜ではお馴染みのコウボウムギ、コウボウシバ、ハマエンドウやハマニガナが多い。兵庫県では風前の灯火だったウンランも雑草のように生えている。兵庫県でみたウンランはハマゴウの木陰にひっそりと咲いていて、広い砂浜の中でも風が直接当たらないような場所を選ぶ繊細な植物かと思いこんでいたけれど、福井のウンランは直射日光・雨・風・飛砂にモロさらされるような場所でもびっしり生えていて力強ささえ感じる。少なくなったというハマニンニク(別名テンキグサ)も健在。ちょうど開花し始めで黄色っぽい雄蕊が風に揺れていた。最後に九頭竜川河口を少し歩いて博物館に戻る。
 今日の採集目録 ハマニンニク、コウボウシバ、ハマエンドウ、Pleioblastus sp.、ムラサキカタバミ、オランダミミナグサ、マツバウンラン、アキグミ、ノボロギク、ヒメスイバ

4/25 海浜植物ツアー その2

 福井市から南下して鯖江市、朝日町、織田町を経由して越前海岸を目指す。織田町付近にはため池が点在していて、夏の水草探しが楽しみである。越廼村に入るとすぐ越前海岸に出た。岩場で最初に目に入ったのはなぜか地際から傾いて生えているハマハタザオ、アオウシノケグサ、そして黄色い花が咲き始めたメノマンネングサ。越廼村蒲生では波打ち際からわずか1m程度の高さに地下水が染み出してできた小さな湿地があって、そこでヒメハリイ(別名ヒメヌマハリイ)の花を初めて見た。ちょっとした風でも波を被ってしまうような場所のせいかしっかり根を張っていて、採集するのにずいぶん苦労する。同じ場所に生えていたのはチガヤをうんと小型にしたような植物。節に毛がないのでケナシチガヤになるのだろうけれどそれにしても小さく気になる。この湿地、瀬戸内沿岸の河口や内湾で見るフクドやハマサジなどが生える塩湿地とは成因が異なるようで興味深い。温暖化で海水位が上昇すると真っ先に影響を受けるのはこのような場所に生える植物なのだろうななどと考えつつ福井市に戻る。
 今日の採集目録 オドリコソウ、シャク、ミゾイチゴツナギ、タチイヌノフグリ、マグワ、ミチタネツケバナ、カモジグサ、スズメノテッポウ、ノヂシャ、カワヂシャ、オオジシバリ、タガラシ、ハマハタザオ、セイヨウカラシナ、スナビキソウ、ヒメハリイ、ケナシチガヤ、ハマニンニク、サワハコベ、ヤマネコノメソウ、ワサビ、ネコノメソウ、アズマシロカネソウ、ツルカノコソウ


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