● この夏、博物館では、「マンボウ昆虫記」のムシたちをお目にかけます。
● マンボウ氏は、沖縄に行ったときこんなスタイルでチョウを追いかけた!?
どくとるマンボウこと北 杜夫氏は高名な歌人斎藤茂吉の次男で、「楡家の人びと」に代表される壮大な小説と、いわゆる“マンボウもの”と称される軽妙洒脱なエッセイで多くのファンを魅了している作家です。昭和35年「夜と霧の隅で」により芥川賞を受賞しています。かつては、精神科医として活躍し、また幼少の頃からの昆虫愛好家でもあります。
さて、「どくとるマンボウ昆虫記」は古今東西の虫にまつわるエッセイで、昆虫少年といわれた人なら誰しも一度は読んだことがあるでしょう。「昆虫記」はマンボウ氏の博覧強記に溢れており、さすがに子供の頃からの虫好きと納得させられることがたくさん書かれています。
この企画展では全20章のうち14章を選び、それぞれの章に登場する実物標本を展示して解説を加えました。また、臨場感溢れる短編小説「谿間にて」に登場する台湾の珍蝶フトオアゲハも併せて展示しましたので、ぜひご覧ください。
◆ 開催期間 2001年7月24日(火)〜9月30日(日) |
* 期間中、9月24日を除く毎週月曜日と9月25日(火)は休館です |
◆ 開催場所 福井市自然史博物館 |
(福井市足羽上町147/?:0776−35−2844) |
◆ 開館時間 午前9時〜午後5時(入館は、午後4時30分まで) |
◆ 入館料 高校生以上100円;中学生以下は無料です。 |
主な展示標本 ( 展示室にはもっとたくさんのムシたちが登場するよ!)
「冬から春へ」より キタテハ・アカタテハ・ヤマキチョウ・ヒオドシチョウ
「詩人の蝶」より アポロチョウ・ウスバシロチョウ・ヒメウスバシロチョウ
「神聖な糞虫」より センチコガネ・オオセンチコガネ・ダイコクコガネ
「まんぼう憶い出を語る」より コガネムシ類(オオチャイロハナムグリ)・ビロウドツリアブ・オトシブミ類
「変ちくりんな虫」より ユカタンビワハゴロモ・ウマノオバチ・テングチョウ・ナナフシ類・コノハムシ
「蜻蛉、薄馬鹿下郎」より カワトンボ・ハグロトンボ・オニヤンマ・ウスバカゲロウ
「さまざまな甲虫」より コメツキムシ・クワガタムシ・ゾウムシ・オサムシ
「天の蛾」より メンガタスズメ・ヤママユ・オオミズアオ・イカリモンガ
「蝉の話」より ニイニイゼミ・アブラゼミ・17年ゼミ・13年ゼミ
「まんぼう、ふたたび憶い出を語る」より ダイコクコガネ・ヤマキチョウ
「高山の蝶」より キベリタテハ・クジャクチョウ・コヒオドシ・ベニヒカゲ
「水に棲む虫」より ミズスマシ・タガメ・タイコウチ・ゲンジボタル
「秋なく虫」より コオロギ・キリギリス・アオマツムシ・カンタン
「まんぼう、沖縄をゆく」より ゴライアスオオツノコガネ・オオゴマダラ
ユカタンビワハゴロモ
オオチャイロハナムグリ
マンボウ氏は中学生の時、コガネムシ科の甲虫を集めていました。「昆虫記」には“〜この珍種を2頭も持っていたことから、やがて私はコガネムシを主に蒐めだした。ふしぎなことにコガネムシの珍種には私はよく出会わしたのである。コガネムシだけで30箱くらい蒐めた。”と書かれています。マンボウ氏がコガネムシを集めるきっかけになったのが、このオオチャイロハナムグリなのです。
オオチャイロハナムグリは割合珍しい種で、大木の樹洞や立ち枯れの樹木にすんでおり、成虫にはジャコウのような香気があります。
フトオアゲハ(撮影:内田春男氏)
昭和34年に発表された北 杜夫氏の短編小説「谿間にて」は、台湾の珍蝶フトオアゲハの探索にのめり込んだ男の物語です。この作品には、深い森の中で苦闘する孤独な採集者の心理と、彼をとりまく台湾の風物が見事に描写されています。
昆虫採集に熱中した人なら、主人公と同じような欲望と挫折を味わったことがきっとあるはずです。